瀬戸内寂聴考
太陽は海に沈んだ後も、薄明りとなって神々しく富士山を浮き立たせる。一日の中で一番美しい時間。明日もこの海に朝日が昇ることを疑いもなく眺める時間。
瀬戸内寂聴さんが亡くなった。
「家庭でも核家族化して年寄りがいなくなって、良い伝統が伝わらなくなった。子どもたちは、人間が老い、病み、死んでゆく過程を身近に見なくなったから、命について考えもしないし、死の避け難い運命を知ろうともしない」
1996年、作家中野孝次さんとの対談で
寂聴さんの講話が大好きだった母の命日が近い。
「好きな言葉は『情熱』。情熱がなければ生きていてもつまらない。その情熱を失わないまま死にたいのよ」
2013年、朝日新聞の取材で
「情熱」を失わないまま人生を全うした人、瀬戸内寂聴。その人生を浮き立たせるかのような今日の日没。