
先日の「令和の百姓一揆」のことをテレビでは報道しなかった。そこに大きな問題がある。日本人は、食べていけなくなるという危機感をもっていない。危機感を持たせないようにしている。でも、確実に危機は迫っている。
近い将来にやってくる危機
政府は小さな田んぼを放棄させ、大規模農業に集約させようという思惑がある。実際少しずつ大規模農業が増えているが、自作農に取って代われる存在にはなっていないと菅野氏は説く。
「日本の約7割が山間部。平地ではない田んぼでの大規模展開は難しいし、日本人の胃袋を満たすことはできません」(菅野芳秀氏)
1970年にはコメ農家は466万戸だったが、2020年には71万戸に減少している。離農し、転職したとしても農家は飢える心配はない。なぜなら田畑でコメや野菜を自給できるからだ。
「農家でない人はどうするのか。それを考えてほしい」(菅野芳秀氏)
令和の米騒動はある意味、いい機会だったと菅野氏は強調する。「2025年の夏、再び米不足にみまわれる可能性があります。2年続けて米騒動が起こり、それでも議論されないのであれば、手の打ちようがありません」(菅野芳秀氏)
令和の百姓一揆を目撃した人、あるいは報道やSNSで知った人が、「農家が勝手なことをやっているとしか思えないようではあまりにも鈍感すぎる」と菅野氏は呆れる。
近い将来コメ農家がいなくなるし、村もなくなる。それでいいのか。この話を全国民が議論すべきではないか。
酪農家も困窮している
疲弊しているのはコメ農家に限った話ではない。令和の百姓一揆実行委員のひとりで、千葉市で酪農を営む金谷雅史氏に話を聞いた。
「農協へ生乳出荷している酪農家が1万戸をわってしまいました。しぼった牛乳を自分で販売する酪農家もわずかながらいますが、それを加えても酪農家の数は全国で1万1,000戸を切っているはずです」(金谷雅史氏)
なぜ酪農家が困窮しているのか。金谷氏が営む金谷牧場の帳簿を見てみよう。ホルスタインを35頭飼育する金谷牧場では、毎日500キロの牛乳を農協に出荷。毎月200万円の搾乳代を得ているが、餌代が毎月100〜120万円かかる。加えて農業組合の手数料、光熱費の他、アルバイトの人件費を差し引くと、手元に残るのは20万円程度。搾乳に休日はない。しかも餌のトウモロコシと牧草を栽培しているため、早朝から夜遅くまで農作業に従事している。
「35頭は1人でなんとか飼える頭数ですが、餌を栽培していてもなかなか儲けが出ません。生活するだけで精一杯。かといって餌作りをやめると赤字です」(金谷雅史氏)
収入の半分が餌代に消えるのはなぜか。コロナの頃から中国で酪農が盛んになり、世界中から飼料用のトウモロコシを爆買いした結果、世界的に飼料代が高騰。2022年に起こったロシアのウクライナ侵攻が追い打ちをかけ、世界中で穀物の需給が混乱し、飼料代がさらに爆上がりしたからだ。
「生産コスト高の影響で2022年以降、廃業する酪農家が跡を絶ちません」(金谷雅史氏)
「令和の牛乳騒動」が起こる可能性も……
2025年の夏、さらなる危機に直面しそうな予兆がある。「令和の牛乳騒動」だ。
「飼料代の高騰で酪農家の大半が、2022年と2023年に生まれた子牛を肉牛として出荷しました」(金谷雅史氏)
乳牛は生後2歳か2歳半から搾乳ができる。2022年生まれの乳牛は2025年頃から、2023年生まれは2026年頃から搾乳がはじまるはずだが、2年続けて搾乳牛が増えていない。
では、なぜ夏に牛乳騒動が起こりうるのか。コメの消費量は年間を通じてほぼ一定だが、牛乳は夏に多く飲まれ、冬に減る。コメは長期貯蔵ができるが、生乳にはそれができない。人間の勝手な都合で、搾乳量を調整できないのだ。
つまり、歯止めが効かない酪農家の減少と、牛乳特有の消費量の波もあり、2025年と2026年夏に令和の牛乳騒動が起こるかもしれないというのだ。
「搾乳量が減ったとしても学校給食用の牛乳は、優先して供給するはずです」(金谷雅史氏)
学校給食がない8月は牛乳不足の心配はまずないようだが、2025年と2026年の7月と9月に牛乳不足が起こる可能性を否定できない。
金谷氏によれば、大手乳牛メーカーへの供給も安定して行なわれるはずだ。けれど、ナショナルブランドではない、地域の乳業メーカーへの供給が真っ先に滞る可能性が高い。ただし、もしスーパーから大手乳業メーカーの製品が消えたら危険水域に入ったと見ていいだろう。
前代未聞の百姓一揆
いずれにせよ、2025年夏、コメと牛乳の「W騒動」にみまわれるかもしれない。
冒頭で「日本の農家はおとなしい」と述べたが、金谷氏によれば、酪農家は過去に何度もデモ活動をしてきた。
「2022年11月、農林水産省前で『酪農ヤバいです』を掲げたデモをしました。2012年にもTPPに反対する酪農家を中心に銀座や有楽町界隈でデモをしています」
2008年5月にも酪農一揆を掲げたデモ活動を都内で行なった。
「規模も小さかったし、拡散されませんでした」(金谷雅史氏)
しかし、今回の令和の百姓一揆は規模が違った。SNSの影響も大きく、前代未聞の百姓一揆だったと肌で感じた。
農業と食の危機を杞憂する全国の市民や農協や超党派の国会議員が、酪農家やコメ農家、野菜農家、果物農家と一緒に令和の百姓一揆に参加。トラクターのデモ行進に続いた。
「4,000〜6,000億円の農業予算を組むことができれば、農家の収入が2〜3倍に増え、就農する若者も増えます。農家が戸別所得補償を受けることができれば、安心して農業を続けることができる。結果、国民は農作物を安く購入できます。農家に戸別所得補償をするためには、国民の理解が不可欠です」(山田正彦氏)
目指すのは「農家と消費者と政府の大連携」
一揆と名付けたが、「政府と対立するつもりはまったくない」と菅野氏は力説する。農家と消費者と政府の大連携をめざす。それが令和の百姓一揆を敢行した動機だ。
「このままでは食べていけなくなります。食べていけなくなるのは、『百姓』ではない。日本国民です。食の危機は命の危機。百姓も考えるから、いっしょに考えましょう」(菅野芳秀氏)
知人の料理人やパン職人がデモ行進を沿道で見守っていた。料理人もパン職人も農家がいなければ、食材がなければ、料理もパンも作れない。料理人もパン職人も、農業と食の危機に気づき、大連携に参加してほしいと切実に思っている。
【現代ビジネス】

自然の美しい景色。また、自然の風物を題材とした詩歌や絵画などをたしなむ風流にもいう。
三省堂新明解四字熟語辞典
まさに「花鳥風月」。今月のカレンダー絵手紙には、「花」の文字が風に揺れている。二羽の鳥のようにも見える。


きょうの健康体操ランチは「まごわやさいしい」に則って作ってみました。
大好評でした。
世界30カ国の中で、日本は「生活の質」への満足度や期待値が最も低い――。
フランスに本部を置く世論調査会社イプソスが、日本を含む世界30カ国を対象にした調査でそんな現状が浮かび上がった。
イプソスは2024年12月~25年1月、欧米やアジアなど各地域にある30カ国の計2万3765人を対象に、幸福度についてオンラインで調査。日本では約2000人が回答した。
幸福感について、①とても幸せ②どちらかといえば幸せ③あまり幸せではない④まったく幸せではない――の4択で聞いたところ、日本では①と②の回答が60%にとどまり、30カ国中27位だった。平均の71%を大きく下回った。24年公表の前回調査(57%)からは3ポイント増えたものの、11年の初回調査(70%)と比べると10ポイント減っている。
幸福度が最も高かったのはインド(88%)で、オランダ(86%)、メキシコ(82%)が続いた。逆に最も低かったのはハンガリー(45%)で、トルコ(49%)、韓国(50%)が後を追った。
なぜ日本では幸福度が低いのか。
幸せではないと答えた日本の回答者に理由を聞いたところ、最も多かったのが「経済的な状況」で64%を占めた。次に多かった「自分の人生には意味があると感じる」(27%)を大きく上回っていた。
一方、幸せを感じる理由で最も多かったのは「家族との関係」(41・1%)で、僅差で「感謝されている/愛されていると感じる」(41・0%)が2位だった。
日本で特徴的だったのは、「生活の質」への満足度の低さだ。「現在の自分の生活の質はとても高い」と答えた比率が、日本は13%と30カ国で最も低かった。平均(42%)の半分にも満たず、日本の次に低かったハンガリー(22%)や韓国(24%)と比べても低さが際立った。
将来への期待値も低い。「5年後には全体的な生活の質は今よりもずっと良くなっている」と答えたのも15%にとどまり、30カ国で最低だった。高かったのは順にコロンビア(79%)、インド(78%)、アルゼンチン(76%)、インドネシア(76%)、メキシコ(76%)だった。
日本の幸福度が低いことについて、イプソス日本法人の内田俊一社長は「経済的に苦しいと感じることが、幸福感に大きな影響を与えているようだ。一方、幸せと感じる要因は『家族との関係』が1位となっており、身近な人との良好な関係性や感謝、愛を感じる価値観が広がれば日本人の幸福度も向上する可能性がある」とコメントした。【岡田英】毎日新聞

山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。 噫(ああ)、われひとゝ尋(と)めゆきて、 涙さしぐみ、かへりきぬ。 山のあなたになほ遠く 「幸」住むと人のいふ。カール・ブッセ『山のあなた』(上田敏訳)
〔 山の向こうに幸せがあるというので、探しに行ってみたけれど、見つけることができずに、涙ぐんで帰ってきた。 そうすると、山のもっとずっと向こうに幸せはあるんだよ、と人は言う〕

ハマグリが水から出て、ひなたぼっこをしていた。それを見たシギが中の肉をつっつくと、ハマグリは殻を閉じてくちばしをはさむ。どちらも譲らずにいると、漁師が来て両方をつかまえた。中国の前漢の書で、戦国時代の策謀を描いた「戦国策」にある有名な寓話(ぐうわ)だ。▼秦や燕、趙などの国の攻防が同書の主なテーマ。趙が燕を討とうとしたとき、遊説家の蘇代は趙の恵王に漁夫の利のたとえを披露する。両国の争いは強大な秦を利することになると説くと、恵王は「なるほど」と応じて攻め込むのを思いとどまった。理をもって諭し、外交で事態を打開しようという発想が戦国策にはある。
日本経済新聞 春秋:2025.4.9
今日アメリカは相互関税の上乗せ分を発動する。
どちらがハマグリでどちらがシギだかわからないが、両方ともつかまってしまう結末がわかっていないトップには、アラームの大音量が聞こえないらしい。
漁師は虎視眈々と狙っている。