アンパンマンに願いを

アンパンマンのアニメ主題歌は、原作者のやなせたかしさん自身が歌詞を書いた。<そうだおそれないで みんなのために>と歌い出す◆これは2番の詞の一部である。放送開始当初、「子どもたちには難しいのでは」と見送られた1番の詞を好きなやなせファンは多い。<なんのためにうまれて なにをしていきるのか こたえられないなんて そんなのはいやだ いまをいきることで あついこころもえる だからきみはいくんだ ほほえんで>◆子供向けの曲調に相反して詞の内容は深い。生きる意味を探して、希望を持って生きよう。そんな呼びかけに聞こえる◆夏休みが終わる前後、自ら命を絶つ小中高生は一年の中で最も多い。やなせさんは楽天家ではない。父との死別など子どもの頃に悲しい思いをたくさんして心が傷ついた。中学になるまで夜尿症が治まらず、友達にからかわれたと自著に書いている◆そうした苦しい体験は、1番の詞の続きにそれとなく出てくる。<そうだうれしいんだ いきるよろこび たとえ むねの きずが いたんでも>。つらくてたまらない時間が来たとき、歌おう。
読売新聞 編集手帳:2025.8.27
なんのためにうまれて なにをしていきるのか
こたえられないなんて そんなのはいやだ
いまをいきることで あついこころもえる
だからきみはいくんだ ほほえんで