メニュー
Information

活動報告

😒気になる石破首相の「対中警戒度」の低さ

 石破首相の場合、得意なはずの外交・安全保障でも「?」がつく。その典型的な例が、中国に取り込まれる形での関係改善である。

 11月15日、石破首相が訪問先のペルーで習近平国家主席と会談し、両手で握手を交わしていた頃、筆者の取材によると、北京で両国の外務省高官による極秘での交渉が行われていた。だが、この事実はあまり知られていない。

 その交渉とは、近く、中国が日本からの渡航者に対するビザ免除措置を、また日本も中国からの渡航者に対してビザ発給要件の大幅緩和を決定するための詰めの協議だったとされる。

 外務省関係者によれば、中国側はこの時点でも、「日本がビザ発給要件緩和をしなければ、こちらもビザを免除しない」という姿勢だったが、その約1週間後の11月22日、中国側は電撃的に日本など9カ国に対しビザ免除の再開を発表した。

 双方の外務省高官協議で暗礁に乗り上げていた問題が、わずか1週間で解決したのは、外相を超えるようなレベル、たとえば習氏自らの判断が働いたとしか考えようがない。

 その背景には、中国経済の低迷がある。経済成長率は5%前後(それも数%は上乗せされた数字と言われている)まで落ち、失業率も若者層では15%前後(全体では4700万人が失業)にまで達する中、アメリカで「反中国」を貫くトランプ政権が誕生すれば、その悪影響は避けられない。

 そうなれば、少し気が早いが、2027年10月ごろ開かれる第21回中国共産党大会で、15年ぶりにトップ(総書記)を交代させようという流れになりかねない。

 習氏としては、新年の演説で「減速する経済は努力により克服できる」と訴えたり、台湾統一について「誰も大きな流れを妨げることはできない」などと力説したりするだけでは足りず、アメリカでトランプ政権が発足する1月20日よりも前に、日本との関係改善を目に見える形で進め、アメリカとの貿易戦争に備える必要があったのだ。

 そこにうまく乗せられたのが石破首相ではなかったか、と筆者は見ている。自民党総裁選挙で争った高市早苗前経済安保相らと比べれば、けっして「反中」ではない石破首相にとって、安倍元首相とトランプ氏、岸田前首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のように、習氏と関係強化を図ることは、政権延命にプラスになる。

 その石破首相は、12月25日、岩屋毅外相を中国に派遣し、中国人向けビザの発給要件を大幅に緩和することや富裕層向けに10年有効ビザの新設を約束した。さらに、12月28日、TBS系列の報道番組では、習氏との首脳会談を重ねる姿勢を強調してみせた。

 これらの対中方針は、日本の国益につながることではある。しかし、中国は沖縄県尖閣諸島周辺で依然として領海侵入を繰り返している国だ。反スパイ法などを設け、日本人をはじめ他国の国民の身柄を平然と拘束する国家だ。中国が差し伸べる甘い誘いに容易に乗ることは断じて許されないと思うのである。

(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水克彦)

注:😒は「大丈夫か日本」を表す絵文字