ワクチンと「疑わしき動機に対する根深い不信感」
秋に定期接種が始まってから、mRNA型ワクチンの安全性を疑う声が高まっている。「レプリコン(増幅)やらシェディング(伝搬)やら。高齢者が専門用語を持ち出し大丈夫かと聞いてくる」。大学病院に勤める医師が驚いていた。SNSが情報源。国も製薬会社も科学的根拠を基に安全を訴えるがなかなか響かない。▼人類学者ハイジ・J・ラーソン氏は、反ワクチン思想の根底には、政治、ビジネス、研究に携わる人々の「疑わしき動機に対する根深い不信感」があると著書「ワクチンの噂」に記す。ならば科学の正しさを振りかざし否定してもデマや噂は消せない。なぜ人々は信じられないのかという問いに真剣に向き合う必要がある。
日本経済新聞 春秋:2024.12.2