「今年の漢字」の成り立ち
今日の漢字とは、毎日ひとつの漢字を更新し、協会が入っていたビルに掲げるというアイデアだ。
「面白いと思ったものの、365日分の漢字を誰が選ぶのか、根拠のない漢字を取り上げても、反響はないかもしれないとも考えました」
すると、こんな声が聞こえた。
「今日じゃなく“今年”なら面白いんとちゃう? 年の瀬に一年を振り返り、新年はよい年であるようにと願う、そんな漢字を全国から募れば話題になるだろうと計画を進めました」
飛び降りる覚悟で清水寺に
発表をどこでするのか。それが大きな課題となった。
「なにごとも最初が肝心です。飛び降りる覚悟でやらなあかん。ならばいっそ清水寺の舞台でやろうと思い立ったんです。清水寺にツテはなかったのですが、直談判したところ快諾いただきました」
揮毫するのは初回から森貫主だ。大野さんは筆と墨、和紙、画板を手配し、当日は森貫主の横で、筆に墨を含ませる担当でもある。いつの頃からかその姿は“墨爺”と称されるように。墨爺にとってこの30年で印象的な漢字は……。
「2011年の『絆』。人にとって大切なものはなにかを教えてくれた、温かくいい一字です」
