命の旅路1千キロ

なんで1千キロも泳いで卵をうむのだろう。大海原をただひたすらに海流に乗り、天敵を避けながら泳いで泳いで、子孫を残す。その姿を想像すると、涙が出る。お疲れ様だったね。
高知県黒潮町の入野海岸で7月3日朝、大きなウミガメ1匹が打ち上げられているのをサーファーが見つけた。波に揺られ、生きているようにも見えたが、すでに死んでいた。
午前7時すぎ、白い砂浜に横たわっていたのは、全長約1.4メートルの大型個体。後ろ脚には黄色い標識(タグ)が二つ取り付けられ、「45571」「45572」の番号がしるされていた。朝日新聞デジタル:エリアリポーター・笠原雅俊
写真を確認したウミガメの生態に詳しいむろと廃校水族館(室戸市)の若月元樹館長は「アオウミガメです。産卵のため小笠原に上陸した際に標識を付けられたのでしょう」と話す。
東京都小笠原村父島の小笠原海洋センターによると、このウミガメは2020年6月16日に父島・大村海岸に産卵のために上陸したとき、標識を付けられた。24年5月13日に再び上陸した際にも標識が付けられたという。
父島と黒潮町の入野海岸は直線距離で1千キロ以上離れている。小笠原で産卵し、太平洋を旅した末に、高知の浜辺にたどり着いたようだ。
小笠原海洋センターの担当者は「口が開いたままなので、生きているように見えるかもしれません。せっかく餌場までたどり着いたのに死亡してしまい、とても残念です」と答えた。死んで打ち上げられたウミガメやクジラなどは、標識や調査で命の旅路が明らかになることもあるという。