
孤独死を防ぐ活動を続けるNPO法人が提供している見守りサービスの利用者が急増している。10~50代は5年前の14倍に。専門家は、現役世代は高齢者にはない孤独死のリスクがあると指摘している。
サービスを提供しているのは東京都江戸川区のNPO法人「エンリッチ」。次のような仕組みだ。
利用者が決めた頻度で「お元気ですか」とLINEでメッセージを届ける。利用者は「OK」ボタンをタップして返答するが、その後も反応がない場合、本人に直接電話をしたり近親者に知らせたりする。安否確認を続けることで、死亡者を早期に発見する狙いがある。
きっかけは、代表理事の紺野功さん(65)が10年前、弟(当時51)を孤独死で亡くしたことだ。2018年11月からこのサービスを始めた。
利用者は19年に延べ622人だったが、24年には1万3836人と急増。年齢を登録する6776人(24年)のうち、10~50代は4378人で6割超だった。19年の10~50代の利用者数は303人で、24年までに14倍になった。
紺野さんは「親族や大家に迷惑をかけたりペットが置き去りになったりすることを心配する声がある」と話す。若い世代の利用者が増えていることについて、近隣や職場での人間関係の希薄さや、頼れる人が少なく孤立した状態にあることが背景にあるとみる。
警察庁が昨年8月に発表した集計では、全国で昨年1~6月に自宅で一人で死亡した「孤独死」は3万7227人。このうち15~64歳の「現役世代」は8826人で約24%を占めた。
孤独死に詳しい日本福祉大の斉藤雅茂教授(社会福祉学)は、現役世代には特有のリスクがあると説明する。ヘルパーなどが身近にいる高齢者とは違い、現役世代は変化が気づかれにくい。特に人間関係が希薄な場合、住環境の悪化など目に見える異変がないと、不審に思われにくいという。
斉藤教授は「孤独死は高齢者だけの問題ではない。生前の社会的孤立そのものが問題だという共通認識を深めていく必要がある」と指摘している。(田添聖史、宮坂知樹)