県民割など需要喚起策 観光庁が資料保存せず検証不能 検査院
会計検査院は、コロナ禍で落ち込んだ観光需要の喚起策として国が1兆円近くを投じて行った「県民割支援」などの補助事業について調べたものの、制度を所管する観光庁が予算の算定根拠に関する資料を保存していなかったため、各都道府県に予算が公平に配分されたか検証できなかったと発表しました。
観光庁は、新型コロナの感染拡大による観光需要の落ち込みへの対策として、令和2年7月から、直轄事業の「Go Toトラベル」を行い、その代わりに、令和3年4月からは「県民割支援」を、令和4年10月からは「全国旅行支援」を、都道府県への補助事業として行いました。
会計検査院が、合わせて9907億円を投じて行われたこの2つの補助事業について調べたところ、観光庁は、いずれの施策についても、都道府県への交付限度額の通知に関する決裁資料は作成し残していたものの、その金額の算出方法など詳細や根拠がわかる資料は残っておらず、作成したのかどうかもわからない状態でした。
このため、観光庁の当時の担当者からどのように算定したのか聴き取って試算しましたが、地域ごとの格差の補正方法がわからないため再現できず、公平に配分されたか検証できなかったということで、会計検査院は、観光庁に、今後は予算執行に関する重要資料を適切に保存するよう求めました。
観光庁は「指摘を踏まえて、今後は適切な運用に努めていきたい」とコメントしています。
国の会計実務に詳しい元会計検査院局長の有川博さんは「予算の妥当性を担保する基礎的資料が残されないと、事業の適正性や検証可能性を考えるうえで大きな問題がある。能登半島地震のあとに行われたように、今後も緊急事態の中で同じような事業が展開される可能性があり、観光庁はなぜこのような事態になったか究明し教訓にしていくべきだ」と指摘しています。