「焼かれつつ飛ぶ」
雁の群れV字の上に先導の一羽がありぬ焼かれつつ飛ぶ 堀隆博『遊離する地平へ』
雁が北から渡ってくる季節になった。彼らは編隊を組んで南に向かう。一糸乱れぬV字の形を保ちながら。
作者は、その群れを先導する一羽に思いを寄せる。風を切って先頭を飛ぶ彼の胸は、いま焼けるように熱いのかもしれない。彼は焼かれつつ飛んでいるのだ。
集団を率いる者はいつも孤独。先行者の苦悩に共感する中年男性の悲哀が滲む歌。(大辻隆弘)
日本農業新聞:おはよう名歌と名句 2024.11.22
共感するのは中年男性だけではない。渡り鳥の美しい編隊は神々しい。先頭を飛ぶ鳥は自分の熱い思いで飛んでいるのか。胸が熱くなる。
人も同じであってほしい。