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活動報告

家の中に「避難所」を 南海トラフに備え耐震シェルター 人気じわり
愛媛県今治市菊間保育所に置かれた耐震シェルターを示す森松浩司社長。工費には地元産材利用のための国の補助金が充てられた=今治市で2017年5月1日、松倉展人撮影

愛媛県今治市菊間保育所に置かれた耐震シェルターを示す森松浩司社長。工費には地元産材利用のための国の補助金が充てられた=今治市で2017年5月1日、松倉展人撮影© 毎日新聞 提供

 愛媛県産の杉材を使い、1週間ほどで建物内に組み立てられる「愛媛県型耐震シェルター」を今治市の建設会社「森松建設」=森松浩司社長(62)=が開発し、保育所や個人からの注文が続いている。年に2~3基がコンスタントに設けられ、シェルター内に非常持ち出し袋や水、食料などを備蓄する利用者も多いという。【松倉展人】

 南海トラフ地震に備え、森松さんは「家の中の避難所」となる安全で頑丈な部屋ができないかと考え、東日本大震災(2011年)を機に製品化を急いだ。えひめ産業振興財団の助成を受け、県内の森林組合から供給される杉材で6畳サイズの箱形シェルターの試作を繰り返した。補強のために天井に7本の鉄骨を渡し、出入り口の上部にも鉄骨を入れた。耐震金具で杉材を固定し、3トンの重りを3メートルの高さから落とす実験で強度を確認。停電になると点灯する充電式フットランプも装備した。

 設置第1号となった今治市菊間保育所は14年に完成。普段は保育や昼寝に使うほか、食料や水などの備蓄品を置く。毎月の避難訓練のほか、実際に四国でも揺れを感じた鳥取県中部地震(16年)の際も保育士が子どもたちを誘導した。

 その後も保育所、幼稚園や個人から注文があり、これまでに愛媛県内で25基あまりを完成させた。住宅の場合はリフォームの際に置く例がほとんど。建物全体の耐震リフォームを見送っても「安全な寝室は必須」と、シェルターを中心にした1階居住部分に改修を集中させる利用者は増え、年配の夫婦が1人1基ずつを生活と就寝に常用する例もある。

 工費は現在、6畳タイプで約80万円から。愛媛県産材でリフォームした住宅への県補助金、各自治体の耐震シェルター補助制度などが利用できる。

 1月の能登半島地震でも建物の倒壊による犠牲者が多数出た。森松さんも「高齢の家族を守りたいという強い希望を感じています」と話し、民間や公共施設からの相談を受けている。

毎日新聞:2024.2.22