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活動報告

伝統と因習について

本を読む人が少なくなっている。(中略)読書にまつわる因習が、人々を読書から遠ざけたように思われるのである。正しく読まねばならない。全部読まねばならない。教養として読んでおかなくてはならない。こうしたことが読書の因習である。

因習とは、囚われの習慣である。因習は人を縛り、自由を奪い、感性を画一化する。どこかで手放した方が良いと感じるいっぽうで、因習はなかなか姿を消さない。因習はなんとももっともらしい。つまり表面的には正しいことのように映る。

因習と伝統は似て非なるものである。過去から受け継がれてきた点は似ているが、本源的な性質を異にする。因習は人を縛るのに対して、伝統はその人をその人自身に近づけ、自由にする。

若松英輔:言葉のちから 2023.10.28