新しい文化
-「サル学」で注目、霊長類研究に寄与 河合雅雄さん死去-
というニュースで思い出したのは、宮崎県幸島の芋を洗って食べる猿のこと。20年ほど前、「100匹目の猿」という本を読んで、この幸島の猿のことを知りました。生物学者が「同行動をとる猿の数が100匹を超えた時その行動が群れ全体に広がり、さらに時空を超えて高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになった」という架空の物語を作ったのですが、もとになった「芋を洗って食べる猿」は実際の話です。これを発見から12年後に英語論文に結実させたのが、河合教授です。
幸島のサルのイモ洗いは、人間以外にも文化と呼べるものがある証拠となった。文化には重要な側面が3つある。「起源」と「伝播」、そして「変容」だ。
まず起源。イモという子ザルが始めたものだ。次に伝播。血縁と遊び仲間という2つの経路で群れの中に広がった。イモの母親やきょうだいが洗うようになり、さらにイモの1歳上や下の子ザルがまねをした。
そして変容。最初は小川で洗っていたが、世代を超えて伝わるうち、浜辺までもっていって海水につけて食べるようになった。土を落とすという当初の目的が、塩味をつけることに変わったらしい。3つの側面を備えたイモ洗いは、まさしく文化と呼べるだろう。
<京都大学霊長類研究所 チンパンジー・アイより>
「文化」が起こり、伝わり、そして進化していく。
サルでもできる。況や。このまちの新しい文化を起こせるはず。